ジェフ便り

【スタジアムからの便り】特別編「開幕4ヶ月の戦いぶりと今後への課題」

【特別編・攻撃】ロングボールの使い方で変わる攻撃

2015年07月02日 21:01 by akanuma_keiko
2015年07月02日 21:01 by akanuma_keiko

 攻撃は選手が距離間よく正面サポートなど『3人目』『4人目』の動きで連係し、サイドチェンジを使って相手を揺さぶったり、中央とサイドをバランスよく使えたりできれば得点機が作れている。第7節・大宮戦の2得点目がその1つの例で、ネイツ ペチュニクが左サイドで自分がボールを奪われた相手にプレッシャーをかけ、相手のパスを読んでパウリーニョがボールを奪ったところから右サイドに展開し、金井貢史、佐藤勇人、井出遥也、パウリーニョ、中村太亮、ネイツ ペチュニクと選手が動きながら中央から左寄りへパスをつなぎ、最後は井出のシュートというシーンだった。また、高い位置でボールを奪ってショートカウンターでスペースを突く攻撃ができれば、チャンスになる可能性が高い。

だが、ディフェンスラインが引いて全体が下がってしまい、低い位置から攻撃を組み立てる場合の攻撃はまだ苦戦している。ディフェンスラインでパスを回せても、特に相手のプレッシャーがきついと、センターバックから中盤へ効果的な縦パスを入れられないことが多い。自分たちの態勢を立て直すため流れを切る意味でのロングボールは必要だし、相手の背後のスペースを突くためのロングパスもいい。だが、最近は相手のプレッシャーがそれほどきつくなくても、ディフェンスラインから単純に前へ蹴ってしまうのが目立つ。

例えば第14節・金沢戦では「相手が前に圧力をかけてきたので、相手のディフェンスラインの裏に思いっきり蹴って相手をひっくり返して、自分たちが前向きで守備をできればよかった」と金井が話したが、「相手を裏返すため」という意味でロングボールを前に入れて相手を背走させ、自分たちが前に出るのを狙っているようだ。だが、実際にはパスの受け手と出し手の意図が合わなかったり、パスの精度を欠いたりして、相手に簡単にはね返されたり、セカンドボールを拾われたりしている。

また、サイドからのクロスという得点パターンに固執して、単純にアーリークロスを入れがちなのも目立つ。ゴール前の人数が少なく、得点になるのは『点』で合わせるしかない状況でもクロスを入れてしまう場面もある。工夫がなければ単なるロングボールと同じで相手ははね返しやすい。もう少しボールをサイドの奥深くまで運んで入れるクロスも使わないと、千葉の得点パターンとはいえ点を取るのは難しい。

そうなってしまう要因の1つが、リスク管理を考えた『セーフティファースト』の意識が強すぎて、近くの味方にボールをつけるのをやめてしまうこと。パスカットを恐れて前へ大きく蹴ってしまうが、同じロングパスでもパスの受け手に楽をさせられるようなパスと自分が楽をできるようなパスでは、相手に与える脅威は大きく違う。また、前線に森本、ネイツ ペチュニク、オナイウ阿道、田中佑昌といった選手が前に張りっぱなしのようになり、町田や井出、佐藤勇のような選手の間でボールを受けてパスを出そうとする選手が前線に近い位置にいなくなると、単純なロングボールが増えやすい。このあたりは点を取りたい時に誰を下げて誰を入れるかといった関塚監督の選手交代、そして選手への指示など采配の影響も少なからずある。「行って来い」というようなパスを出せば、1人で何とかしてくれるようなストライカーは今の千葉にはいない。

さらに、選手のコンディションの問題も大きい。今季はまだ無得点の谷澤達也は第16節から2試合連続で負傷欠場したが、負傷箇所を抱えながら出場していた時期があった。これ以上は無理ができないことから欠場したが、本来の谷澤らしいキレを失っていた感がある試合もあった。また、日本のレフェリングに苦戦しがちながらも活躍してきたネイツ ペチュニクも日本特有の蒸し暑さが徐々に影響してきたか、最近はプレーの切れ味が鈍っているようだ。突出した能力を持つ選手がほとんどいない千葉だからこそ「攻撃も守備ももっとコレクティブにやりたい」と話した関塚監督だが、組織的なサッカーを目指しても誰が出ても同じようにとはいかず、結局、固定されたスタメンで選手個々の能力に頼ったサッカーになってしまっている。若手選手などが監督の信頼を得られていないにしても、試合でチャレンジの場をもう少し与えて経験させて成長させるのも必要ではないだろうか。

そして、最も問題なのは、苦しい時こそ下を向かずに、プレーや『声』でチームを引っ張ろうとする『大人』の選手がスタメンに少ないこと。実際の年齢はまったく関係ない。今の千葉が好調時のような攻守のハードワークを失ってしまっているのは、精神的な影響も少なからずあると思う。今の状況、そして試合の流れを的確に把握して、チームに必要なことを判断できるか。それを味方に伝えながら正確に実践できるか。選手全員が人に頼らず、もっと自分でやる意識で臨まないと、優勝争いができる状況に再浮上するのは難しい。
 
守備編:機能しなくなった前線からの連動したプレス

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