ジェフ便り

【天皇杯2回戦:千葉vs青森】レポート:開始早々の失点で難しさを増した戦いは、千葉が一時逆転するも最後はPK戦で決着

【千葉vs青森】レポート:開始早々の失点で難しさを増した戦いは、千葉が一時逆転するも最後はPK戦で決着

2018年06月07日 19:14 by akanuma_keiko
2018年06月07日 19:14 by akanuma_keiko

J2の千葉にとってJFLのラインメール青森(以下青森)はカテゴリーが2つ下のクラブだが、千葉がJ2リーグ第17節・山口戦からスタメンを全員入れ替えてスタートしたとはいえ、PK戦にもつれ込んで決着がつくという紙一重の戦いとなった。そして、天皇杯で初の導入となったABBA方式のPK戦は、千葉が5-4と制して3回戦進出を決めた。トーナメント方式の大会ではとにかく勝ち上がることが重要で、その意味では結果を出した千葉だが、前述の山口戦と同様に攻守の課題が改めて浮き彫りとなった一戦となった。

この試合の千葉はここ最近のJ2リーグ戦で採用している4バックで中盤はダイヤモンド型、2トップという4-3-3システムではなく、以前に採用していた4バックでダブルボランチ、1トップとセカンドトップという4-4-1-1システムで臨んだ。GKは佐藤優也、左サイドバックはこの試合が負傷からの復帰後初の公式戦となる乾貴哉、センターバックは左にエベルト、右に鳥海晃司、右サイドバックは溝渕雄志で、ダブルボランチは左がホルヘ サリーナスで右が佐藤勇人、サイドハーフは左が為田大貴で右がゲリア、そしてセカンドトップは清武功輝、1トップは古川大悟だった。

一方、青森は1回戦でセンターバックの小山内貴哉が延長戦の終了間際の119分に2度目の警告で退場処分となったため、2回戦は出場停止。だが、直近の公式戦であるファーストステージ第11節では小山内はベンチ入りもしておらず、その第11節からこの一戦でのスタメン変更は1人だけ。髙橋寛太に代わって李太漢がセンターバックの一角に入った。
試合は千葉がボールを保持して攻めるのを受け、青森が千葉のミスも含めてのボール奪取からカウンター攻撃を狙う展開が予想されたが、試合はいきなりその展開となった。2分、千葉は溝渕が清武からのパスを受けようと右サイド前方に走りこむが、青森の左サイドバックの小口大貴がパスをカット。小口のパスから小幡純平がドリブルで仕掛け、さらに小幡のパスを受けてボールをドリブルで運んだ小口が千葉のゴール前のスペースにパスを出す。そこに走りこんだ太田徹郎がGKの佐藤優の位置と動きをよく見て冷静に決定的なシュートを決め、青森があっさりと最初の得点機で先制点を奪取した。出鼻を挫かれた格好の千葉だが、時間が早いこともあって焦ってバタバタするようなことはなかった。6分には乾が豪快なミドルシュートで青森ゴールを脅かすと、その直後の7分CKでは清武のボールに古川が頭で合わせるが、この決定機は青森のGKの横山卓司がしっかり対応。青森もまた千葉の隙を突き、7分に太田のスルーパスを受けて多木理音が抜け出すが、ここは佐藤優が落ち着いて対応し、連続失点を許さなかった。

その後は千葉が攻めこむ時間帯が続くものの、ラストパスやシュートの精度不足で決定機までは作れない。一方、もともとはしっかりとパスをつないで攻めるスタイルの青森は、しっかりとゴール前で体を張って守りつつ追加点を狙ったが、やはり細部の精度を欠いて決定機は作れなかった。すると、千葉は34分、フアン エスナイデル監督が清武を読んで何事か指示を出した。清武がチームメイトに伝言すると、千葉は4バックの並びはそのままに中盤と前線の形を変更。中盤は佐藤勇がアンカーに、インサイドハーフの左がホルヘ サリーナスで右がゲリア、前線は左から為田、古川、清武という3トップとなった。
それでも得点までには至らず、1点ビハインドでハーフタイムを迎えたのだが、攻撃面の課題として一例をあげれば、カウンター攻撃のチャンスにミスから速くフィニッシュに持ちこめずないというものがある。もう一度攻撃を組み立て直してやることで、その時間に相手がすっかり帰陣してしまい、千葉は相手の周囲でボールを動かすだけになってしまいがちだ。この試合でも前半終了間際にはホルヘ サリーナス、為田とパスをつなぎ、クサビのパスを受けた古川が左サイドを駆け上がってきた乾にパスを出したのだが、パスは乾の前ではなく後ろに行ってしまった。そして、乾が少し戻ってボールを保持する間に青森が守備体形を整えてしまい、カウンター攻撃のチャンスを生かせなかった。

後半も千葉が押し気味に試合を進めつつ、青森がカウンター攻撃やロング気味のミドルシュート、FKでゴールを狙う展開が続いた。それでも決定機は作れない状況に、千葉は60分に古川に代えて指宿、63分に溝渕に代えて矢田旭を入れ、ゲリアを右サイドバックに、矢田をインサイドハーフの右にしてゴールを狙った。すると、74分、左サイドから為田、乾と仕掛け、クロスは相手に当たったこぼれ球をホルヘ サリーナスが拾ってパス。これに指宿が頭で合わせて同点ゴールを奪った。一気に逆転したい千葉は、さらに80分に乾に代えてラリベイを入れ、指宿との2トップに変更し、ホルヘ サリーナスが左サイドバックに入った。サイドだけでなく中央でクサビのパスを入れる攻めも見せたが、追加点までは奪えず、試合は延長戦に突入した。

延長戦の開始時にホルヘ サリーナスに代えて高木利弥を入れた千葉は、延長戦の前半は青森に1本もシュートを打たせずに押し込んだ。そして99分、為田が左サイドで仕掛けてクロスを入れると、青森は横山がパンチングするも遠くへは飛ばず、ほぼフリーの状態でボールを受けたのは清武。難なく蹴りこみ、ついに逆転した。しかし、粘る青森は足を攣るなど疲労が見える選手を交代しつつ、失点にめげずに反撃。すると延長戦後半の110分、小口のクロスに合わせた多木のヘディングシュートはクロスバー直撃でノーゴールだったものの、こぼれ球に素早く反応した浜田幸織が右足で合わせて2-2に追いつくゴールをゲットした。その後は同点ゴールで勢いを増した青森がやや押し気味となったが、カウンター攻撃やCKのチャンスを生かせずにそのまま延長戦は終了となった。

PK戦は、千葉の1番手で先攻のゲリアが大きくクロスバーの上に外してしまったが、青森の1番手で後攻だった多木もまたクロスバーの上に外してしまう。そして、青森の3番手で後攻だった山﨑正登の蹴ったボールはクロスバー直撃で失敗となったが、千葉の4番手で後攻だったラリベイが中央に蹴ったボールはGKがセーブした。互いに5人ずつ蹴り終わった状態では3-3でサドンデス方式となり、7番手の先攻だった高木の蹴ったボールはGKに反応されるも両手を弾いてゴールイン。これを決めなければ3回戦進出ができない青森の7番目手で後攻だった小口が蹴ったボールはクロスバーに当たって外れ、PK戦5-4でかろうじて千葉が3回戦進出を決めた。

千葉は、攻撃面では連係の部分や個人の技術など細部の本当にちょっとしたミスで得点機を作り出せないところが目立ち、守備面ではゴール前でのマークミスで相手をフリーにしたり、マークしていながら最後までマークしきれなかったりという部分が目立った。わずかな部分ではあるが、それを突き詰めてミスを減らしていかないとJ1昇格はやはり難しいものになってしまうし、J1の神戸と対戦する天皇杯3回戦を勝ち抜くのも難しくなる。これから蒸し暑い夏になり、集中力や体力という部分で厳しい時期を迎えるが、しっかりと乗り越えられるように、チームとしても選手個々としてもレベルアップしてほしい。

関連記事

【千葉vs秋田】プレビュー:ファーストバトルとセカンドボールの回収で勝ち、推進力のある攻撃で得点と勝利を狙う

【千葉vs秋田】試合後コメント:藤田和輝選手「(勝点が)0か1かは大きく変わる。自分からもっと意見を出していかないといけない」

【千葉vs大分】レポート:先制後に数多くの決定機を作るも決めきれず、CKの流れから失点して1-1の引き分け

【千葉vs大分】レポート:先制後に数多くの決定機を作るも決めきれず、CKの流れから失点して1-1の引き分け

【千葉vs大分】プレビュー:前節の徳島に続き近年は相性の悪い大分に、攻守で工夫と対応力を発揮して3連勝を狙う

【千葉vs大分】レポート:先制後に数多くの決定機を作るも決めきれず、CKの流れから失点して1-1の引き分け

読者コメント

コメントはまだありません。記者に感想や質問を送ってみましょう。

バックナンバー(もっと見る)