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【天皇杯3回戦:神戸vs千葉】レポート:前半の前への推進力は好材料も変わった流れを取り戻せず、ミス絡みの連続失点で惨敗

【天皇杯3回戦:神戸vs千葉】レポート:前半の前への推進力は好材料も変わった流れを取り戻せず、ミス絡みの連続失点で惨敗

2018年07月12日 19:25 by akanuma_keiko
2018年07月12日 19:25 by akanuma_keiko

舞台は天皇杯、相手はJ1の神戸と、J2リーグ戦との違いがあるとはいえ、敗戦の要因となった攻守の問題点は同じだった。ただし、フアン エスナイデル監督は試合前、選手たちに「1つ言ったことがあります。我々が去年、築き上げたアイデンティティをもう一度取り戻そう。それはプレッシャー、アグレッシブさだ」とのことで、システム変更や例えば佐藤勇人などの起用もあって、前から果敢にプレスをかける守備、縦への推進力を持った攻撃は見ることができた。それだけに、決定機をモノにできない得点力不足、ゴール前で相手選手を自由にさせてしまう守備の甘さによって、大敗を喫したのは残念だった。

連戦による疲労の蓄積を考慮した千葉は、7月7日のJ2リーグ第22節・大宮戦からスタメンを6人変更し、システムを4-2-2-2から3-4-2-1に変更した。GKをロドリゲスから佐藤優也に変え、近藤直也、乾貴哉、矢田旭、船山貴之、指宿洋史に変えて岡野洵、エベルト、ゲリア、佐藤勇人、ホルヘ サリーナスを起用。3バックは左から得エベルト、増嶋竜也、岡野で、ダブルボランチは左が佐藤勇で右が熊谷アンドリュー、ウイングバックは左がホルヘ サリーナスで右がゲリア、前線は1トップにラリベイで、2シャドーは左が為田大貴で右が茶島雄介だった。

一方、6月9日のYBCルヴァンカップのグループステージ第2節・横浜M戦から約1ヶ月ぶりの公式戦となった神戸は、その試合から2人変更。GKが前川黛也からJ1リーグ戦での正GKであるキム スンギュに変わり、そして田中順也に代わって安井拓也がスタメンに名を連ねた。システムは、中盤が藤田直之のアンカーにインサイドハーフの左が安井で右が三田啓貴、そして左から渡邉千真、ウェリントン、大槻周平の3トップに見えた。
前からプレッシャーをかけ、ボールを奪うと素早く前へ展開していく千葉は序盤、右サイドからの攻めが目立った。開始早々には茶島が相手選手2人に挟まれながらもドリブル突破を図ってCKを得たり、5分には増嶋がスライディングタックルでボールを奪って為田がカウンター気味に攻めたりした。また、8分にはラリベイのパスカットから茶島が仕掛け、クロスが惜しくも為田の前でクリアされる場面もあった。そして、サイドからクロスという形だけではなく、例えば20分には攻め上がったホルヘ サリーナスが中に切り込んでラリベイとのワンツーを狙い、ここはリターンパスがホルヘ サリーナスの動きと合わなかったものの、ゴール前の中央を効果的に使おうとするトライも見られた。
一方、神戸は両サイドの前方のスペースへロングパスを出しつつ、中盤が起点になったパスワークで攻めようとするが、スペースへ飛び出す動きがオフサイドになったり、ロングパスがタッチラインを割ったりする場面もあり、パスワークは千葉のプレスの網にかかってなかなか決定的な形を作れない。それでも中盤の3人、そして前線の3人が目まぐるしくポジションチェンジをして状況を打開しようとする中、17分に渡邉、ティーラトンとパスをつなぎ、ティーラトンのクロスからウェリントンがヘディングシュートを放ったが、これはゴールマウスを外れた。

試合の流れを大きく変えたのが30分のラリベイのPKだった。ペナルティエリア内で為田の突破を止めようとした宮大樹のプレーがファウルとなり、千葉が得たPKをラリベイが蹴ったのだが、やや左寄りの低めに蹴ったボールをキム スンギュがセーブ。1試合も出場がなかったとはいえ、ワールドカップ・ロシア大会の韓国代表メンバーである力を見せた。千葉にしてみれば絶好の先制点奪取のチャンスだったが、PKを得ても決まるとは限らない。だからこそPKで得点できなくても気落ちせず、「助かった」と安堵して攻勢を強める相手を助けるようなミスをしてはいけなかった。だが、PKの直後の31分、バックパスを受けた佐藤優がうまく処理できなかったのを見逃さず、神戸は安井がこぼれ球をマイボールにして先制点をゲット。その5分後には、為田のドリブル突破に体を寄せた三田がボールを奪って渡邉にパスを出し、17分と似たような形でティーラトンのクロスからウェリントンが頭で合わせて追加点を奪った。J2リーグ戦と同じように失点してすぐの時間にまた失点を繰り返してしまった千葉は、少なくとも2失点後には落ち着きを取り戻したかった。千葉は38分、岡野、ゲリア、茶島とパスをつなぎ、ラストパスを受けた為田はキム スンギュがやや前に出ているのを見るとループ気味のシュートを打ったが、これはキャッチされてしまった。すると、その直後の39分、ウェリントンが起点になって渡邉のパスから三田がフリーで仕掛けると、佐藤優は前に出てシュートを打たれるのを防ごうとするもかわされ、追いかけたDFも間に合わず『3点目』を奪われてしまった。千葉がうまく攻めきれずに攻守が切り替わったところで神戸に素早く攻められ、マークの受け渡しがうまくできず、失点し始めると局面でも体を張りきれなくなった感があっての失点だった。
千葉は後半開始から熊谷に代えて小島秀仁を入れたが、あとわずかで連係が合わなかったり、神戸の守備に阻まれたりして決定機がなかなか作れない。逆に、56分にスローインから大槻のパスを受けた三田が今度はホルヘ サリーナスをかわすようにしてシュートを決め、勝利をより確実なものに近づける『4点目』をゲット。このあとは神戸が攻めるペースを落とし、千葉の攻撃を受け止めつつカウンター攻撃を狙うような感じとなり、58分にラリベイに代えて清武功輝、61分に増嶋に代えて指宿を入れて4バックに変えた千葉が押し気味の展開となる。だが、佐藤勇のロングパスを受けた指宿のシュートがGKにセーブされた3分後の74分、神戸は渡邉がボールを運び、67分に藤田との交代で出た三原雅俊のクロスから大槻がヘディングシュートを決め、さらに点差を広げた。その直後の75分、千葉はドリブルから指宿が角度のないところからシュートを決めて一矢を報いるが、90+1分には神戸が右サイドで郷家友太(59分に高橋峻希に代わって出場)がボールを運び、オフサイドにならないように飛び出した渡邉がマイナス方向へパスを出すと、そこにフリーで走りこんでいたのはウェリントン。難なくシュートを決めてスコアを6-1とした。
スコアは惨敗となった千葉だが、シュート数は両チームとも11本。選手個々の技術の問題もあるが、やはり楽にシュートを打てる状況を作れていたかどうかという問題もあるだろう。千葉はマークミスによって神戸の選手にシュートを打ちやすい状況を作ってしまった。だが、それは守備陣だけのせいではなく、押し込まれた時に攻撃陣が流れを変えることができなかったことも一因だ。例えば、小島が中盤でうまく浮いた状態でパスを要求してもディフェンスラインからパスが出なかったり、神戸のディフェンスラインの裏にタイミングよく出ようとする動きを見せる選手がいても中盤からパスが出なかったり、ちょっとした意思の疎通の欠如、フィニッシュまでの同じ絵をイメージできていないことからくる連係の問題も見られた。このあたりは千葉がトレーニングゲームをやっていない影響もあるように思える。長所も短所も連係プレーも熟知しているチームメイトとのプレー時間が長くない紅白戦形式の戦術練習では、何をやってくるかわからない相手の隙を突く攻撃、目まぐるしく変わる状況下でのマークの受け渡しの術などはそうそうレベルアップしない。また、そういった場だからこそ鍛えられる選手個々のスタミナやプレーの精度もあるはずで、コンスタントに試合をしていない千葉の選手は、試合勘だけでなくフィジカル面や技術面も感覚が鈍ってしまっているように見えることもある。
そして、千葉の攻守の前への推進力は選手のメンタル次第のようにも感じられる。なかなか流れが変わらない時間帯で、4失点目を喫した直後の57分、茶島は左サイドへ大きく出て行ってGKのボールを奪おうとして競り合った。記者席からは茶島がキム スンギュにつかまれてマイボールにしきれなかったように見えたが、ああいう気迫に満ちたプレーを試合終了の瞬間まで見せてほしい。全員がもっとタフにならなければJ1昇格は難しい。

reported by 赤沼圭子

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